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酒造り真っ最中、酒蔵訪問記

前日の豆まきでストレスを発散し?立春を迎えたすがすがしい早朝、奈良へ発った。

今回は吉野の「北村酒造」と伏見「月の桂」への訪問である。

のぞみの車中、長閑な風景から突然関ヶ原付近で真っ白な雪景色にかわり、
窓ガラスには吹雪のように雪があたる。本当に私は雪女だ・・・。
不安になりながらも京都に着いたときにはよいお天気でひとまず安堵。

新しくなった京都駅に戸惑いながらも近鉄に乗り換え、
奈良は吉野まで約二時間の長閑な列車を楽しんだ。

途中、樫原神宮駅での乗り換えをした際に駅構内で
「柿の葉寿司はいかがですか〜」と売り子さんが声をだしている。

新幹線車中で食べてしまったおにぎり弁当に後悔。帰りは絶対に食べてやるぅ!
でも売切れていたらどうしようと、余計な心配をしつつ、2車輌しかない吉野線に乗り換える。


そして稲毛を出た約五時間後、ようやく600キロ離れた吉野上市に着いた。
冷たい風が心地よく頬をさす吉野山の麓、吉野川の手前にある吉野上市に「北村酒造」がある。

私自身は今回で三度目の訪問だ。吉野といえば吉野山の桜が有名だが、
初めての訪問はやはり酒造りの時期だったので無論、桜はない。

二回目は4月上旬に桜を見に行ったが、
その年の桜は遅れていて、花やぐらがある吉野山のてっぺんには、
桜吹雪でなく、雪が舞っていたのだった(私が雪女のせい?)

そして今回も酒造り真っ最中。故に桜はまたもやお預けだ。

 

 


 

さてそろそろ酒造りの話しにしよう。

当店でも「猩々」のブランド名でもおなじみの北村酒造は
今から約二百年前からこの吉野の地で酒造りが始まった。

吉野の山の山林業も営む北村家は、その酒を木こりや山の修験者達に愛飲された。
現在は十七代当主の北村宗一郎氏を筆頭に、次期十八代目「宗四郎」を襲名される子息、
豊一郎氏と共に豊かな歴史を重んじた銘酒を醸している。

蔵は4階建て建築のようなもので、先ず米を山の一番上の倉庫に運ぶ。
そこから米を磨く「精米」、米を洗う「洗米」、米を蒸す「蒸米」、
麹を造る「麹室(こうじむろ)」、発酵させ酒の元をつくる「酒母(じゅぼ)造り」、等々の
「酒造行程」が段々と下の階になるにつれ、酒の姿になってゆく。
非常に合理的であり賢い酒蔵なのだ。

ちょうど「雄町米」の吟醸酒をしぼったところで、しぼったばかりの原酒を口に含みいれる。
これが酒蔵での醍醐味。アルコール度数も18度くらいであろうこの原酒、
まだ微炭酸を感じるたった今誕生した酒の味わいはやはり新鮮である。しかし、
雄町の酒は熟成によって見事に成長する酒ゆえ、この子が世にでるのはまだ数年先だ。

今生れたこの「雄町」が元服して、大人になり、いい男になるのが楽しみである。

宗四郎社長、豊一郎専務とも今後の日本酒がどうあるべきかをじっくりと議論した。
歴史を重んじた酒の造り、そして日本酒新時代へ向かう今、当店と酒蔵が生み出す
新しい酒がこの春誕生する。ご期待あれ。

納得の北村酒造訪問を終え、雪景色の吉野山をあとに、京都へ向かう。
もちろん「柿の葉寿司」を車中で楽しんだことは言うまでもない。

 


 

京都の夜を大好きな先斗町で少しだけ堪能し(本当に少しだけ)、
レポート作成を終えた昨夜と打って変わって今朝はとても「ぬくい」。
旅館の仲居さんが「今日はぬくいですなぁ〜」と色気のある京都弁で言っていた。

寒いことを予想して着てきたダウンが邪魔である。
京都の町から車で約20分、伏見区の下鳥羽にある増田徳兵衛商店が、
にごり酒で有名な「月の桂」である。 実は私、大越智華子が本格的に酒を覚えたのが
この「お蔵」である。

今から十数年前に、この蔵でSSIの「酒造り体験実習」をしたのだ。

この体験とは、よくあるカッコだけの数時間コース体験とは違う。
蔵の宿泊場は蔵人でイッパイなので、寝泊まりは近くの旅館にしたものの、
冬の寒〜い朝5時に蔵に集合、杜氏さんたちと一緒に洗米、蒸米つくり、
麹造りにいたるまで、ず〜っと同じ作業をし(作業といっても我々は手伝いになるが)
杜氏さんたちの苦労話しや体験談をききながら昼食をとり(昼食といってものんびりできるわけはない)
終いの仕事まで、数日間身をもって体験した。
帰りの京都駅で相当疲れていたのだろう、私はへなへなと倒れたのだった・・・

 

 

そんな思い出のある「月の桂」はあの時と何も変らずにいてくれた。
今日も酒造りに励む杜氏さん、そして今は十八代目を襲名され当主になられた増田徳兵衛社長。
笑顔で出迎えてもらった。

この日は一般の酒蔵見学者が後を絶たず、私も一般のお客様と一緒になって社長の
酒蔵案内を楽しませていただいた。この蔵はにごり酒でも有名だが、
日本一、古酒をもっていることでも有名だ。

その酒名は「琥珀光(こはくひかり)」

当店でも販売しているが、十年物の古酒である。この蔵の秘密の倉庫には42年前からの
古酒が静かに眠っているのだ。その一年一年にはたくさんの思い出が詰まっていることであろう。

ここでももちろん造りの真っ最中である。
今日しぼっていたのは、京都の酒米「祝(いわい)」の純米酒だった。
またまた、しぼりたての酒との出逢い。この「祝」の米はすばらしい。
きっとこの子もいい男になるに違いない。

蔵でしか販売していない琥珀光の初しぼりを購入。
酒好きにはたまらないだろう。このお土産を呑むひとの笑顔が目に浮かぶ。


今年四十年目を迎えた「月の桂 にごり酒」。
これからの四十年も変らずにいてほしい。

 

帰りの新幹線の時間まで少し余裕があった。
暇だからといって月の桂で買い物をしながらノンメーターで待っていてくれた
タクシーの運転手さんに薦められて、坂本龍馬が通った「寺田屋」に連れていってもらった。

龍馬が大好きな私はちょっと感激。お竜さんとの恋の裏梯子も見てきた。
少し観光した気分。

今度は京都にゆっくりと来ようと胸に誓い、
京都駅でまた新幹線車中で食べる「柿の葉寿司」を買ってしまった。

平成17年2月5日 大越智華子 報告。

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