|
日本酒の楽しみと健康的な飲み方
■ 国酒・日本酒
一頃前までは"日本酒=オヤジの酒"という風潮や、何となく古臭い・・・日本酒って
難しい・・、飲むと二日酔いする、頭が痛くなる・・など、さまざまな理由で敬遠されが
ちな日本酒でしたが、吟醸酒など香りが華やかでフルーティーな日本酒の定着や、近年は
全国各地のカップ酒人気に始まり、飲み口の優しいお酒や低アルコールの日本酒が人気に
なるなど、日本酒全般の窓口がおおきく広がったように感じます。私のお酒セミナーでも
以前はワインの依頼が多かったのですが、ここ最近に措いては「日本酒」についての依頼
がとても増えてきました。これはとても喜ばしいことです。
日本酒は我が国・日本の「国酒」であります。世界中に数多くのお酒が存在しますが、
それはその土地土地の気候風土と文化から生まれたそれぞれの食品でもあるのです。まさに
伝統文化が生むものといっても過言ではありません。例えばフランス・イタリアといえ
ばワイン、これはローマ帝国が侵略した国々に葡萄の苗を植えていったことに始まります。
厳冬のロシアでは穀物から生まれたアルコール度の高いウオッカは12世紀頃から地酒とし
農民を助け、灼熱の国メキシコでは熱帯で生育する竜舌蘭の根から造られるテキーラがあり、
太陽と海に恵まれた西インド諸島で生まれたお酒はサトウキビ原料のラム酒、等々。
そして日本といえば稲作文化から生まれ2000年の歴史を持つ日本酒というように、
伝統文化・気候風土とは切り離すことは出来ない文化の象徴でもあるのです。日本酒は
我が国の国酒・・というと少々大袈裟に聞こえてしまうかもしれませんが、大切に守り
育ててゆくべきものと考えます。また醸造法でも、麹菌や自然界の菌による発酵という製法
では、世界に類を見ない高度な技術でもあるのです。これらの製法も自然の摂理とともに
育まれた醸造酒といえるでしょう。
■ 級別廃止から特定名称酒の時代へ
平成元年の酒税法改正により、一級・二級・特級など税金の違いによる級別制度が廃止
されてから約18年、この間に日本酒のスタイルが大きく変化を遂げました。それは、
原材料・精米歩合の違い・造り方の違いで、味わいの異なる日本酒の種類が明確になったことに
よります。「本醸造酒」・「純米酒」・「吟醸酒」これらの名がつく日本酒を特定名称と呼び、
日本酒の中身がはっきりとわかるようになりました。(資料1)
例えば、「純米酒」と日本酒のラベルに記入されているお酒は「米と米麹」だけで造られた、
米の味をそのままに感じる芳醇な味わいの日本酒です。また「本醸造酒」とラベルにある
日本酒は、その純米酒に"規定内"の醸造アルコール*を加え、酒質のバランスをとり
純米酒よりもすっきりとした飲み口の味わいを楽しめます。そして「吟醸酒」という文字が
ラベルにある日本酒は、お米をより精米しお米の芯の部分を使用した精米歩合が高い白米を
使用し、吟醸造りという低温発酵で時間をかけて醸し、香りよく上品で洗練された味わいを
醸し出す日本酒になります。この「本醸造酒」・「純米酒」・「吟醸酒」の3つの文字が
ひとつでもラベルにあるものは、素性のしっかりした特定名称の日本酒なのです。
大吟醸のように大の文字をプラスしたり、純米吟醸のように組み合わせされているものも
同様です。残念ながらこの文字がラベルに見つからない場合は、普通酒と呼ばれ、添加する
醸造アルコールの量が多かったり、精米歩合が低かったりとします。
このように、日本酒のタイプや味わいが明確になったことも、日本酒の入り口を増やして
いるといえます。例えば酒屋さんで日本酒を選ぶとき、お料理屋さんでお料理に合う日本酒を
選ぶとき、その特徴を知っていると飲みたいタイプの味わいにより近い日本酒を選択することが
出来るのです。
また、いま海外でも日本酒ブームと言われています。ニューヨークやヨーロッパ各地でも
日本酒のソムリエなる「きき酒師」の資格を有するサービスマンが、自国のお料理に合した
わせた日本酒をサービスしているのです。全般的にスムースな味わいよりも、しっとりと
芳醇なタイプの香りの高い大吟醸が人気のようです。
■ 女性に大人気!日本酒のシャンパン?
ビール業界に発泡酒なる税金の安い軽めのビール風飲料やアルコール分が低くフルーツの味を
人気とするチューハイが誕生して約17年、低アルコールで飲みやすいお酒は現在の社会に
欠かせないお酒の種類となりました。逆にいえば、低アルコールや味わいの薄いものに
慣れてしまった期間ともいえます。発泡酒に慣れすぎてしまうと、たまに飲むビール本来の
味が濃くなっていると聞きます。また世界中でウイスキーなどのハードリカー(アルコール度の
高い酒)の消費量も激減していることも事実です。そんな中、日本酒業界も低アルコール酒や、
日本酒のシャンパンと呼ばれる発泡性のお酒も多く誕生しました。
これらは女性にも大変な人気で、日本酒とは感じない甘く口当たりのよい、優しい飲み心地、
そしてとってもオシャレな日本酒として女性ファンを魅了しています。小瓶でも楽しめる
極甘口の日本酒はデザート的要素もあり、日本酒が苦手の方でも美味しく楽しめ、食前酒に
梅酒を楽しむ感覚でも味わえます。
■ 世界のお酒のなかで唯一、飲用温度の幅が広いのが日本酒
秋も深まり、冬の訪れとともに恋しくなるのも日本酒。冬には熱燗とお鍋や、炬燵に入って、
ぬる燗と旨い肴でゆっくりと楽しむのもいいですね。お燗と一言でいってもその温度の
違いで、同じお酒がまったく別のお酒になりますが、日本酒は"お燗・常温・冷や"と
飲料温度を幅広く変えて味わうことができる万能なお酒です。味わう温度は、そのとき
の気分や、気候・気温、お料理に合わせてなどご自分がいちばん楽しめる好きな温度で
よいのです。(資料2)
吟醸酒は冷やさなくてはいけない、ということはありません。造りのよい吟醸酒は
冷やしすぎると、せっかくの味わいが硬くなりすぎて、芳香も少なく硬く閉じたままの
お酒になってしまうのです。冷やすぎた日本酒は少し常温に戻してあげると味わいも
深まります。また、空気にふれさせてあげることもあります。
ワインが注がれたグラスをクルクルとまわす光景をみたことがありませんか?
これはワインと空気を触れさせて、ボトルのなかで窮屈になった味わいを生き返らせているのです。
これは日本酒でも同じ。グラスを回す必要はありませんが、ゆっくりと空気に触れることによって、
その日本酒本来の芳香と味わいがよみがえるのです。
また吟醸酒のぬる燗もOKです。熱くし過ぎたお酒はせっかくの味わいが飛んでしまいますので、
常温に近いぬる燗をお奨めします。
濃厚な味わいの日本酒のロックも可。氷を入れてもバランスが崩れないお酒は、どの飲用温度
でも十分に楽しめるからです。最近では熱燗用の日本酒も登場しています。固定観念に
とらわれず、好きなお酒を好きな温度で呑む・・日本酒を楽しむ極意です。
■ アミノ酸たっぷりの日本酒で、健康+美肌効果+ストレス軽減!
昔から日本酒は「百薬の長」と云われてきましたが、科学的技術の発展とともに、
そのメカニズムが解明されてきました。適度な飲酒は心臓病やガン、骨粗しょう症、
健忘症などの発症リスクを下げるというデータが世界の疫学的研究で次々に発表されています。
また、お酒のなかでも特に多くのアミノ酸を含むのが実は日本酒です。アミノ酸のほか、
日本酒には4000といわれる成分が含まれています。これらは動脈硬化、心筋梗塞、
肝硬変など、多くの生活習慣病の予防にも有効なのです。また、緊張によって収縮した血管を
拡げ、毛細血管の動きを活性化させ血液が流れやすい状況をつくります。血管にもハリが
でて若返り、筋肉のコリもほぐしてくれるのです。適度な日本酒をゆっくり楽しむことで
ストレスを和らげ、病の予防、そして美肌効果がある日本酒はまさに百薬の長なのです。
■ 日本酒と一緒にお水で"酔い上手"
ウイスキーをロックやストレートで飲むときに一緒にでてくるお水をチェイサーとよびますが、
日本酒にもチェイサーがあるのです。その名は「和らぎ水(やわらぎみず)」。
日本酒を飲みながら、お水を飲むことで、酔いの速度がゆっくりと穏やかになります。
この飲み方は、深酔いせず、二日酔いにもなりません。また合間に飲む水で口中をリフレッシュ
させることで舌の感覚を鈍らせないため次の一杯やお料理を鮮明にしてくれます。
ぜひこの方法で明日から二日酔い知らずをお試しください。翌日の身体がとてもすっきりする
ことを実感できるはずです。
■ 日本酒だけでは太りません。
健康的に飲む日本酒はご自身にあった適量がいちばんです。日本酒は太るから・・と敬遠
されている方もおられますが、実はちょっと間違いです。アルコールのカロリーは1cc
約7.5キロカロリーと、どのお酒でも同じです。お酒もお肴も美味しくて、ついついの
飲みすぎ&食べすぎが総摂取カロリーを高くしているのです。日本酒を飲むと太ると言われるのは、
日本酒が美味しいからということを裏付けていることにもなりますね。
また、お料理の下ごしらえから仕上げまで、ふんだんに使えるのも日本酒です。日本酒は
いろいろな調味料と相乗効果を生み、素材本来の旨みを引き出してくれます。お料理にも
上手に日本酒を取り入れてください。
日本酒が美味しいこの季節、ぜひ明日の活力においしい日本酒で心も身体も癒してください。
いくら日本酒が百薬の長とはいえ、飲みすぎにはご注意を。健康に楽しむには、ご自身の
適量を知り、ほどよく楽しむことがいちばんです
大越智華子
社団法人 日本食品衛生協会「食と健康」12月号寄稿
|